簡略化の限界値 — どこまで削っても意味は残るか

オレンジ色の三角形だけでは、それが何かはわかりません。
しかし、その上に緑の葉を一本加えると、私たちはそれを「ニンジン」と認識します。

逆に言えば、ニンジンのアイコンから緑を消した瞬間、
それはもうニンジンではなくなってしまいます。

一方で、ニンジンの表面に入れた細かなシワ。
これを消したとしても、かわいさやディテールは失われますが、
「ニンジン」という認識自体は失われません。

このことからわかるのは、

  • 緑は「ニンジンを成立させるための必須パーツ」
  • シワは「ニンジンを魅力的に見せるための付加パーツ」

であるということです。

この境界線こそが、簡略化の限界値なのだと思います。

目次

ピクトグラムは、この考えの洗練された形

ピクトグラムやアイコンは、
この「どこまで削っても意味が残るか」という問いを突き詰めた結果の形です。

情報を削ることが目的ではなく、
認識が成立する最低限だけを残すことに特化しています。

これはとても高度な設計です。

なぜなら、削りすぎると意味が消え、
残しすぎるとノイズになるからです。

工業系のイラストでは、特にこの考えが重要になります

工程や仕組みを伝えるイラストにおいて、
過剰なディテールは、理解の妨げになることがあります。

「うまい絵」や「かっこいい絵」よりも先に、

誤解なく認識できること

が最優先になります。

つまり、

最低限認識が保たれるところまで簡略化する

ことが、見る人に「伝える」という点で非常に有効になります。


工業系の手順や工程を説明するイラストでは、もう一つ重要なことがあります。
それは、見る人を「観察モード」にさせないことです。

描き込みが多いイラストは、つい細部を見たくなります。
形や質感、陰影などを追い始めると、視線はイラストそのものに向いてしまいます。

しかし本来見てほしいのは、イラストではなく工程や内容のはずです。

そのため、必要以上に描き込まないことで、
見る人を「理解モード」に留めることができます。

イラストを観察させるのではなく、
イラストを通して内容を理解してもらう。

これもまた、簡略化の重要な役割の一つだと感じています。

実は、これは会話にも同じことが起きています

日本語の会話では、主語を省略したり、
ニュアンスで察してもらうことが多くあります。

場合によっては
「わからなかった方が悪い」という空気すら感じることもあります。

しかし、伝えることを仕事にする立場では、
この考え方はとても危険です。

企業間や仕事上のやり取りの中では、
誤解の余地が生まれない言い回しが常に意識されています。

これはイラストにもまったく同じことが言えます。

空気を読んでもらうことに期待せず、
絶対に間違われない情報量を確保すること

もしイラストだけでそれが難しい場合は、
迷わず文字の力も借ります。

伝えることにおいて、手段にこだわる必要はないからです。

ただし、「簡略化=正解」ではありません

ここで誤解されやすいのですが、
簡略化すること自体が目的ではありません。

依頼内容によって、この「限界値」は変わります。

例えば、

  • 工程を伝える図であれば、シンプルであることが最優先
  • サイトやパンフレットのビジュアルとして使用する場合は、ある程度の描き込みが必要

という違いがあります。

かっこよく見せるためには、
「これを描かないとかっこよくならない」というラインが確実に存在します。

これは、

  • 情報の限界値
  • デザインの限界値

という、2種類の境界線の話になります。

どこまで削れるかではなく、

目的が成立する最低限はどこか

を見極めることが重要になります。

だからこそ、依頼ごとに描き方は変わります

常にシンプルに描くわけでも、
常に描き込むわけでもありません。

伝えることが目的なのか、
魅せることが目的なのか。

その違いによって、残すべき情報は変わります。

この判断こそが、イラストを設計する上で最も重要な部分だと感じています。

伝えるためのイラストに必要なこと

イラストは感覚で描くものと思われがちですが、
実際には

何を消しても成立するか
何を消したら成立しなくなるか

を見極める作業の連続です。

これはニンジンの緑の線と同じです。

伝わるイラストとは、
余計なものがない絵ではなく、

誤解の余地がない絵

なのだと思います。

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